毎日がアルツハイマー
毎日がアルツハイマーという興味惹かれるドキュメンタリー映画が、ポレポレ東中野というミニシアターでかかっていると知って、台風上陸が心配される今日、出かけて来ました。一応何人かの友人に声をかけてみましたが、私の母のことがあっての興味だから、結局お一人様で。
29年シドニーに住む関口祐加監督が、母親の様子がおかしいことを実家の2階で暮らす妹さんから知らされ、息子さんを元夫に託して母親と暮らすことを決意します。認知症状が出始めてからの2年間を撮ったフィルムです。
“長編動画”と銘打っているように、元々はお母様の日常を記録した短い動画をYou Tubuで次々と発表して、長編のドキュメンタリーに再編集した、ということだそうです。
年齢の割に白髪が少ない、朝ぽっくり亡くなっていたい、呆けたくない、と三つのこだわりを持つおばあちゃん。
ですが、段々外出を億劫がり、同じシャツを着て、昼寝ばかり・・・症状は進みます。監督の姪っ子こっちゃんとの微笑ましいふれあいや、数ヶ月母の元に来てどちらと暮らすのか決断しなければならなかった監督の息子さんが、おばあちゃんのためにと地元公共の音楽室を借りてピアノの演奏会を…と企画するけど、おばあちゃんはやっぱり行かない。息子さんが音楽室のホワイトボードに今日の参加者を書きます。その中には「欠席のおばあちゃん」と。でも、映画のラストのほうで、シドニーから82歳のバースデープレゼントに、とスカイプを通じてピアノ演奏をおばあちゃんに届けると、おばあちゃんの目には涙が。
その間に脳神経外科の先生や、監督のコネクションによる専門医、また地域包括センターを訪れ、ケアマネさんや訪問看護師さん…様々なエピソードで介護する側、される側の日常が描かれます。
映画のなかで、新井平伊先生がお話になっていた アルツハイマーという病気は多幸症とも言われる…神様が老いて訪れる死への恐怖やいままで生きて抱えた葛藤を忘れさせてくれる時間 という言葉が印象に残りました。
それから、認知症への考え方で勉強になりました。私もそう考えるところがあったので、感動しました。
認知症状というのは人格が崩壊するのではなく、
実際は脳の95%は正常に機能している、
感情の起伏といった症状は正常な反応、
瞬間瞬間は正常だが持続しない
映画に描かれるおばあちゃん;宏子さんは、認知症状の初期からで、少し怒りっぽいシーンが出てくるんですが、映画の中の時間から少し経った今現在、監督が言うには「平穏というか、いい感じでボケている・笑」のだそうです。
私も、楽しんで介護生活をしたいと想いました。介護は60点を目指すとちょうどいいそうです。
現役母親時代は良妻賢母だった母。誰よりも遅く寝て、誰よりも早く起きて、家族のために働き、自分よりも常に夫や姑や子供たちを優先してきた母が、今は少女のようになって、時に我侭を言い、時に辛らつな言葉を投げ、時に甘えて・・・母がそうなったことが嬉しくもあるのです。
ところで、このミニシアター、隣に素敵なカフェがあって、地下に階段で降りてゆくのですが、踊場に次々かかる拘りの映画のフライヤーが置いてある間接照明の素敵なスペース。さらにその下の踊場には休めるように4脚のお洒落な椅子。とても、居心地の良い空間でした。
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