啼かないカラス
母に、アメリカンチェリーを持っていこうと寄ったスーパーを出ると、その裏道;車道に烏が1羽いる。確か、駐車場に入る時にもそこに居た。ゴミ置き場でもないのにずいぶん長いこと居る、飛べないのかな、と気になって、クルマを停めなおして近づいた。
烏は人を警戒しないのも多いけど、にしてもしなさ過ぎ。動かない。歩道に、日傘と首を傾げながら、彼を心配する女性がもうひとり。「このコ、ずっと居ますよね」と話しかけると、「そうなんです、さっきから見てるんです」私たちの話し声に烏がやっと、一歩退く。でもそれは、車道の真ん中により近づくことになった。
スーパーの裏道;駐車場に出入りする車だけの利用だから、クルマどおりは多くないし、スピードは出さないから、簡単に跳ね飛ばされはしないだろうけれど、どうしよう、このまま放置できない。
「こういう時って警察に電話するんでしょうか?」そう言われ、以前、小動物園でオウムなどの鳥や小動物、ワラビー、エミューの飼育係をしていたとき、事務所に「野鳥を保護したけれど」という電話がよくかかっていたのを思い出した。近くであれば連れてきてもらって必要なら獣医に見てもらってから放し、または事務長は市役所のある課に連絡していたはず。となると、ここはその施設からは遠いし市役所ね、と。彼女にもそう告げて、さて電話しよう、その前に写真撮ろうと思って携帯を向けると、シャッター音への反応か、自分が連れ去られると予感したのか(賢い鳥ですから)、地面低く飛んだ。飛んで近くを流れる用水のフェンスにとまった。羽が痛んではいるのだろうけど骨が折れているような飛び方ではなかった。それに、私たちが見ている間、一声も発しなかった。
彼女と顔を見合わせほっとして、「飛べましたね!」と、同時に言った。
怪我なのか精神的なものなのか(笑)具合が悪いには違いなく、心配は残ったが、それ以上は仕方がない、自然界(人間との共存だからそういいきれないけれど)で生きる彼の運命でもある。母の待つ施設に向かった。
わらべ歌のように、烏の眼ってまんまるなんだな、彼は啼かなかったけど、とちょっと場違いなことを思った。
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