自己嫌悪

*おかげさまで退院しました。どうぞよろしくお願いいたします。



大きな目をした華やかな顔立ち、頭の回転がいいのだなあと思わせる、軽快なサバサバした話し方をする女性です。ともすると暗くなりがちでもある病室を、明るい雰囲気に変える明るさを持った彼女は、とても元気で、入院患者とも思えないほどでした。
お子さんが5人もあって、毎日彼女のところにはご両親やお子さん達が、忙しそうなご主人のぶんもカバーするように訪ねてきています。
楽しそうにご家族のエピソードを話してくれる彼女は、特定疾患に罹ってしまい、もう2年間も入退院を繰り返しているとのこと。今まで二度も危篤状態に陥ったとのことでした。
有効な治療方法の模索中なのだそうです。

この病室でいちばんの明るさの彼女なのに。余命宣告を受けたときの話など、なんと言葉をかけていいやらわかりません。本人は「だめなときはだめなんだろうし」「気にしていないの」と屈託がないのです。

ある日の夕食時、新しく入った方が手術後で麻酔も醒めきらずやすんでいたところに、彼女のご家族がやって来ていて…ご両親、ティーンエイジャーのお嬢さん二人、息子さんも一人その友達連れで。それはそれは賑やかに笑いさざめいているので、
つい、静かにしてくれたらいいのに、ここは病室だから、と口に出て、また間の悪いことにその言葉は部屋中に響いてしまって…

部屋が凍りつくように空気が悪くなりました。響いてしまったその言葉は、私が思ったよりもずっと毒を持っていました。
手術後の方とその付き添いのご家族、もう一人の患者さんはびっくりして押し黙り、面会に来ていた若い人達はデイルームに出ていった様子、残った人達は声数段階を低くしてくれました。私は自分のカーテンから出られないまま、もっと違う言い方があっただろうと後悔していました。

しばらくして彼女が子どもたちに何やら言いつけています。彼女のお母様が差し入れに持ってきた唐揚げに私が持っていたマヨネーズを貸して下さいと声をかけてくれました。
とてもほっとしてどうぞと差し出す私。
良かった、歩み寄るきっかけを作ってくれたこと。少し静かにしてくれたらと思っただけのつもりが、きつい言い方をしてごめんなさい。


後から彼女に聞いたのですが、その日はドクターから彼女の病状が悪くなっているとの話があったとのことでした。知らなかったとはいえ、思いやりのない態度をとってしまいました。病気は、私から気遣いを欠いたようです。とても明るく屈託の無い彼女への屈折した嫉妬の感情でもあったのでしょうか。全く情けないことです。それでも彼女の機転のおかげで、また彼女からうるさかったねと言い出してもくれて、翌朝に私は謝ることができました。

ごめんなさい。一日も早いご回復を祈っています。

李々佳・・縷々綿々

占い師:李々佳のあれこれ雑記・・・ どこへいくかわからない散漫な話ですが、目に留めていただけたら嬉しいです。 「リーディングケース」では今までの実占例をご覧になれます。

0コメント

  • 1000 / 1000