タリズマン
うつ伏せに眠る80%のひとは、秘密の恋をしているのだとか。
彼女も、いつの日からか枕に顔を埋めて眠りにつくようになっていた。
彼女も、いつの日からか枕に顔を埋めて眠りにつくようになっていた。
彼とはもう永いこと、連絡をとっていない。
赤いリボンに蝋燭、ペパーミントオイルと上弦の月への願い・・・
魔女のまじないを試した日々もあったけれど。
その春の夜、探しものは見つからず、黄ばんだタリズマンが出てきた。
ああ、これも彼にかけようとした魔法のひとつ。
書かれた名が、ふいに押し寄せた懐かしさと切なさでぼやけた。
つまみあげた左手、薬指にはプラチナが光る。
「ああ、これもタリズマンだ」 と彼女は思い、黄ばんだ護符を灰皿で燃やした。
うつぶせ寝は続いていたが、
「ああ、これもタリズマンだ」 と彼女は思い、黄ばんだ護符を灰皿で燃やした。
うつぶせ寝は続いていたが、
この護符さえ忘れていた彼女の日常に、もう彼の存在は薄れていたのだから。
黒い煙がたちのぼり、燃えかすを少しの間見つめたあと、
黒い煙がたちのぼり、燃えかすを少しの間見つめたあと、
甘く苦い感傷も一緒にシンクに流した。
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